NC MM  満洲国国立中央博物館
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写真   Photographic Album of the National Central Museum of Manchoukuo

大経路展示場開場当日紀念 Souvenir of the Opening Day of the Dajinglu Exhibition Hall's

 1940年7月15日、満洲国国立中央博物館新京本館大経路展示場の開場式の際の記念写真。撮影者は不明。人物は、前列左から木場一夫(学芸官)、北村千代治(総務科長)、藤山一雄(副館長)、遠藤隆次(学芸官/自然科学部長)、三宅宗悦(学芸官/奉天分館長)、2列左から深田又造(委任官試補)、壇寿美、不明、不明、尊田是(学芸官佐) 、3・4列左から:不明、不明、不明、不明、不明、二井内勝治(学芸官)、野田光雄(学芸官)。 壇寿美は壇一雄の妹。
 この写真は、藤山一雄の著書『新博物館態勢』の挿入写真34と同一で、『博物館基本文献集』別巻(1991年、大空社)にて『新博物館態勢』を解説した後藤和民は、この写真に触れて「最前列のかなり年を取った奉天分館長や自然科学部長や総務科長などの中央に、一番年若い著者(藤山一雄のこと━引用者注)が座っている」と断定的に記した。しかし、判明する限りで、この時、藤山一雄51歳、北村千代治49歳、遠藤隆次48歳、尊田是38歳、木場一夫36歳、二井内勝治35歳、三宅宗悦35歳、野田光雄32歳であり、後藤の解説の誤謬は明白である。
 ところで後藤は、『博物館学講座』第7巻「展示と展示方法」(1981年、雄山閣出版)所収の「歴史系博物館」において、「いかに研究体験の豊富な学芸員であって、その独特な学説を保持していても、それが個人的な独断と偏見にもとづく誤謬であってはならない」とした上で、「一般に、歴史系博物館において、学界に論文を発表したこともない、また論文を発表するほどみづからの研究成果も、歴史的観点ももち合わせていない者が、学界の定説や自己流の独断論によって、無責任な展示を行っている例が多い。あらゆる機会になしうる、いかなる吟味も検討も反省もなしに、歴史展示を行うことは、それを参考として、自主的な研究や学習を行う人びとに対して、この上もない不遜な態度であり、一種の冒涜であろう」と指弾したが、この主旨は、文中の「展示」を「解説」に置き換えてもまったく正当である。
 かくして、藤山一雄と満洲国の博物館は、後藤の一人芝居をプロデュースしてみせたのである。

(1998年5月4日、2005年2月4日改稿)